1992年の作品。宮部みゆきは初めて読みました。
ナニワ金融道が1990~1997年ですから、
ちょうど消費者金融が話題になった時代ですかね。
カード破産を絡めた犯罪ドラマです。
作者は当時31才と若いですが、
緻密な取材に基づいたリアル志向の社会派作品です。
会話が多く、分厚さの割には早く進みますし、
全般的に、読みやすい文章なのですが、
日常の見落としてしまいがちな風景の一端を
丁寧に切り出しているのはいいのですが、
ちょっと風変わりな比喩表現を使ったり、
普段使われないような言葉を急に持ち出したりするので、
流れるような美しい文章とは言えず、
だからといって華がある文章でもなく、
気持ちのいいメリハリを感じないのですよね。
リアル志向のためか、キャラクターにもあまり華がないようです。
あと、個人的にダメだったのは、主人公息子のキャラですね。
10才やそこらで、思考や態度が、嫁なんですよね。ゾワッと来ました。
作者が自分の女性的なものを投影しちゃったのでしょうかね。
取材で仕入れた、ちょっと面白い雑学ネタがあって、
それだけ並べてもあまり面白くないので、
うまいことストーリー仕立てにして混ぜ込んでみました、
ということであれば、良くできています。
実際、最後までそれなりに面白く読めますし。
ただ、それ以上のものがあまり感じられなかったです。
個々のネタは面白いのですが、
なるほどと思わせるような絡み方をしていない気がしますね。
火車 (新潮文庫)