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2012年 02月 04日
三陸海岸大津波 【印象度:92】
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三陸海岸大津波 【印象度:92】_e0020682_18474072.png

1970年発表。文庫版を読みました。

吉村昭は中学生のとき親父の本棚にあった「羆」「魚影の群れ」
あたりを読んだことがあって、
県立高校の入試で「ハタハタ」だったか「魚影の群れ」だったかが
たまたま国語の読解問題に出てきて、ラッキーだった記憶があります。
吉村昭を読むのはそれ以来ですね。

人に恵をもたらす自然は、時にはうってかわり、
人の生活、命を、翻弄し、簡単にひねりつぶす・・・
そのさまを硬質な筆致で描き出していきますが、
底流には、土地の自然にすがるしか術のない人の業
に対する慈しみが感じられるのですよね。
これまで読んだ著者の作品にも共通するところです。

本作は三陸海岸で過去発生した大津波についての記録文学です。
(1)明治29年(1896年)の津波
(2)昭和8年(1933年)の津波
(3)昭和35年(1960年)チリ地震津波
の三者三様の津波を取り上げています。


(1)明治29年(1896年)の津波

死者2万人以上に及ぶ、3.11に匹敵する被害でした。

本作取材時から70年以上も前の出来事ということもあり、
生存する被災者が少なくなり、生の記憶が消えかけていた時期でした。
そんな中、かき集められた記録が再構成され、
日清戦争直後の東北の漁村の住民の息づかいが感じられる
読み物として心に響きます。

中でも印象的だったのは、
土砂に完全に埋まってしまった死体を探すための
生活の知恵から出たテクニックが紹介されていたことです。
なかなか生々しいです。


(2)昭和8年(1933年)の津波

明治29年の津波に比べると被害は小さかったのですが、
真夜中の大きな地震で、津波が来ないことを確認して、
再び寝込んだところで、多くの被害が出ていて、
死者・不明者が約三千人に至りました。

被災者が被災当時に書いた手記がたくさん残っていて、
当時の様子が生々しく甦ります。
田舎の漁村で、住民による被災時の詳細な記録が残ることが、
とても貴重なことだと感じ入りました。
一般庶民がものを書き残す文化が、長く根付いていることの貴重性です。

そして、多くの中から選び抜いた手記ではあるのでしょうが、
そのすべてが、簡潔で無駄がありません。
くどくどした部分が一切なく、心動かされます。
方言なのかもしれませんが、
「ノゴノゴ」とか「ミリミリ」などの独特な擬音表現が多くあり、
ことが尋常でない様子をさらに際立たせています。

また、小学生の作文が大量に残っているのですが、
小さい視野だからこその臨場感がそこにはあります。


(3)昭和35年(1960年)チリ地震津波

チリ近海で起きたM9.5の大地震に起因するもので、
国内で105名の死者を出しました。

気象庁はハワイで死者60名の津波被害が起きたことを承知しながら、
日本まで到達すると考えず、津波警報を発令しませんでした。

まさに地球の裏側で起こった地震ですが、
津波による国内死者はピンポイント的で、
岩手県大船渡53名、
宮城県志津川町41名、
北海道浜中町11名
となっています。

地形的な特長によって津波が増幅されたのではなかろうかと思いました。

三陸地方では、この津波について、変化の周期が緩慢なことから、
「のっこのっこ」とやってきたと表現したそうです。


三陸海岸大津波 (文春文庫)
by camuson | 2012-02-04 13:25 | 書籍 | Trackback | Comments(0)
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