ゲーム
2010年発売のPS3用ノベルゲーム。
原作は、竜騎士07率いる07th ExpansionによるPCノベルゲームで、
孤島を舞台にしたクローズドサークルミステリ風味で、
全8部作で構成されています。原作は未プレイです。
本作はその内の第1部から第4部までを
PS3用にカスタマイズしたもので、
原作テキストはほぼそのままに、
アニメ化の際の声優達によるフルボイスが追加され、
グラフィックが全面的に書き換えられています。
前のシリーズ「ひぐらしのなく頃に」では、
私はアニメから入ったのですが、
日本の山村における土着系ホラーミステリの雰囲気が良く出ていて、
高く評価しています。(過去記事参照:
ひぐらしのなく頃に(アニメ))
続いて原作PCゲームの第1部「鬼隠し編」もプレーしましたが、
時間が掛かり過ぎるところが、厳しいなと感じ、
続きをやりたい気持ちがありながらも、
結局やらず仕舞いになっていました。
アニメの2期も原作をやってからと思っていたので、
結局見ず仕舞いになっています。
さて、前置きが長くなりましたが、本作についての感想です。
昨年の12月暮れ、冬休みが始まってからプレイし始めたのですが、
総合的なエンターテインメントとして驚くほど質が高くて、かつ新しく、
あまりの面白さに、やめどきを失ってしまうような状況です。
70時間かかると言われていますが、なんとか1ヶ月程で終わらせました。
中毒気味でやめられず、矢継ぎ早に続編を購入してプレイしているところです。
1986年10月4日、5日に伊豆に浮かぶ孤島で起きた連続見立て殺人事件が、
第1部から第4部まで、それぞれパラレルに、
現実世界と魔女が跋扈するファンタジー世界が混ざり合って展開され、
その上位空間では、主人公の青年が、ファンタジー(魔女)を否定するために、
すべてをミステリ(推理)として説明すべく、
魔女と思考ゲームを戦っていくという、
一見矛盾した作品構造をとっていて、
読者も主人公の立場で推理を進めていく事になります。
竜騎士07は、地の文章の表現が若干くどいところもあり、
あまり文章は上手くないと思うのですが、
キャラクターづくりと、キャラを特徴付ける台詞表現のセンスがずば抜けているのと、
常に読者の予想の斜め上を行く怒濤の超展開の発想のぶっ飛び方が凄まじく、
これまでのミステリの常識の枠を、軽々と飛び越え、
ファンタジーとの融合を果たし、読者を煙に巻きつつ、
なお、ミステリとして読者に挑戦を仕掛け続ける新しいスタイルを発見し、
作品として昇華しているところに、思わず感心してしまいます。
そして、CV(Character Voice)ですが、
声優達の仕事が見事というほかありません。
絵に動きがない分、声優達の演技にも熱が入っています。
アニメ作品ではこれほど声優の熱演を堪能できる作品は見つからないと思います。
この手の作品としては大人の登場人物がやたら多く、
渋みのある声の演技を堪能できるのも本作の特徴です。
そしてグラフィックですが、
2009年に放送されたアニメ化作品が、
女性によるキャラクターデザインということもあり、
少女漫画的な細かく細い線描なのに対して、
逆に本作のグラフィックはアニメ的な、
スッキリと洗練された美麗なデザインとなっていて、
アニメのように原画の間を埋めるための安価な外注などは不要ですから、
作画崩壊とはまったく無縁でもあります。
そしてまた音楽が品格があって、作品の雰囲気を高めています。
脚本と声とグラフィックと音楽のすべてが、高い質で融合しており、
小説とアニメの間に位置する今までにない新たな総合エンターテインメントとして、
その立ち位置を確立しているなと感じました。
原作の竜騎士07によるヘタウマなキャラ絵も悪くないのでしょうが、
正直、原作をリアルタイムでやらずに、
最初から、総合的完成度の高い本作をプレイできたことは
ラッキーだったと思いますね。
原作では終わり方に不満の声も上がっているやに聞いていますが、
とにかく続きが気になります。
うみねこのなく頃に ~魔女と推理の輪舞曲~「うみねこのなく頃に散 ~真実と幻想の夜想曲~」のレビューは
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