書籍
2004年発表。
文庫サイズで表紙と挿絵にキャラクターのイラストが付加されるフォーマット、
いわゆるライトノベルのレーベルから出版されていることから、
ライトノベルに分類されるのでしょうが、
内容的には、結構ガッツリとした近未来戦争小説です。
イラストも、なかなか力が入っていて悪くないんですが、正直なくてもいいです。
近未来的戦争を扱った作品として、
本作の3年後に発表された「
虐殺器官」(伊藤計劃著)がありますが、
本作は、そこまで綿密な社会設定の表現はなく、
ほぼ一兵卒の視野の範囲で納まっています。
時間遡行が話の肝になっていることからも、
よりファンタジックな味付けになっています。
戦死すると同時に出撃前日に戻ってしまうという
時のループにとらわれた初年兵の話です。
主人公が時のループに嵌まり込んだことにより、
自機が何度死んでもリセットできるビデオゲームさながらとなります。
人の死が軽くなって、
今後のストーリー展開において感動が薄まってしまうんじゃないか?
と余計な心配をしてしまったのですが、
杞憂でした。
ループを抜け出すときに選んだ道は、二度とやり直しがきかず、
むしろ、無数の選択肢から選ぶことが可能であったはずだからこそ、
やり直しがきかない唯一の現実が強調されることに。
そのあたりよく練られていると感じました。
主人公とヒロインがお互い背中を合わせて敵と戦っている場面あたりだったか、
クライマックスの大筋が読めてしまえたのですが、
それで興ざめになることはまったくなく、
期待通りに期待を超えて爽快な読後感でした。
All You Need Is Kill (集英社スーパーダッシュ文庫)