書籍
1997年発表。
著者はアメリカの進化生物地理学者のジャレド・ダイアモンド。
3年くらい前に単行本上下巻を購入したのですが、
上巻を読み途中で紛失してしまい、
1年位前に買いなおしたのですが、またまた行方不明になり、
そうこうするうちに文庫化されたので、
携帯性に優れる文庫版を上下巻共買いなおして、何とか読了しました。
さて、内容ですが、
何故、ヨーロッパ起源の白人が文明を発展させ、
世界中の大陸や島に渡って支配するに至ったのか?
逆に何故、アフリカの黒人や、アメリカ原住民、オーストラリアアボリジニは、
ヨーロッパに渡って白人を支配するに至らなかったのか?
という素朴な疑問に対する科学的な答えとなっています。
結論として、
地形、気候、資源などの物理的条件が
悠久の時の流れの中で、指数関数的に強力なパラメータとして働き、
住人達の資質の初期値差による影響などは誤差程度であろうことを、
これまでの地球上のヒトの進化の歴史をつぶさに分析することで、
実感させてくれるというものです。
知的な刺激に溢れていて、味わい深いディテールの話も多々あるのですが、
ややもすると微に入りすぎて、
大きな流れを把握するのを阻害している感があるのですよね。
結構くどいところもあれば、数ページ前に書いたことを指示代名詞で指したり、
けっして読みやすくはありませんでした。
新しい見方が与えられ、興味深かったもの。
・病原菌の働き
・陸塊の広がる方向
・言語学から読み解く流通史
<病原菌の働き>
農耕定住生活が進み人口密度や家畜密度が高まると、
病原菌の進化も加速され、人間は抗体で対抗し、
いたちごっこ的な切磋琢磨?が進み、
いざヨーロッパ人が他の大陸や島を侵略した際に、
たまたま持ち込んだ病原菌が、
虐殺を免れた原住民達を知らず知らずのうちに、
ほぼ全滅させてしまっていたという話です。
当時の当人達は当然自覚がないでしょうが、
歴史としても、うっかり見過ごしてしまいがちなことです。
<陸塊の広がる方向>
東西に広いユーラシア大陸が、南北に広いアフリカ大陸、アメリカ大陸より
文明発展上有利であったという話です。
最初聞いた時にはピンと来なかったのですが、
なるほど、日本のような島国ですら、
東京-博多間の東西軸の流通が早くから発展したのに対し、
東北、北海道の南北軸の発展が随分後になったことを考えると、
妙に納得できますね。
<言語学から読み解く流通史>
輸入する側に今まで存在しなかったモノが輸入される場合、
モノと一緒に名前も輸入されることが多いことから、
言語の中の外来語(元の言語と語形が違う)をつぶさに調べていくと、
家畜や栽培植物の原産地を推測することができるという話です。
物証としては残っていなくても、
言語の中に流通史の痕跡が残っているというのは、
興味深いことですね。
文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)