書籍
1968年発表。
スウェーデンの警察小説マルティン・ベックシリーズの第4弾で、
エドガー賞受賞作。
角川文庫版を読みました。
映像化作品は未見、佐々木譲の同名作は未読です。
ストックホルムのバス内で起きた銃乱射大量殺人事件を、
個性のある警官たちが捜査する話。
私は文庫本は紙カバーを外して読むのですが、
カバーを外した背表紙の「笑う警官」のタイトルの上に
「推理小説」と銘打ってあるのを見つけました。
しかし、本作はいわゆる犯人当てゲームが可能な推理小説ではありません。
捜査の緻密な描写や、都市社会の描写を楽しむ警察小説です。
スウェーデンは福祉国家と言われていますが、
大都市ストックホルムにおける格差問題、麻薬問題、離婚率の高さ
などが垣間見られてたいへん興味深かったです。
ベトナム戦争反対のデモが行われるなど時代の空気も上手く取り込んでいます。
しかし、とにかく人名と地名がわかりづらく、判別しづらく、
人物がファーストネームで呼ばれる場合と
ラストネームで呼ばれる場合があり、頭の中で一致せず苦労しました。
登場人物リストがあればどれだけ助かったことか・・・
犯人は終盤になって、急に捜査線上に登場するので、
読者が推理することはできません。
ですからミステリではなくサスペンスですね。
サスペンスとして常に先が気になり、
ぐいぐいと読ませる筆致は確かなものなのですが、
終盤のインパクトが今ひとつかなぁと思いました。
でも最後のオチはなかなか良かったです。
読み終わって、紙カバーをかけ直したら、
カバーの折り返し部分に登場人物リストが・・・
こんな仕掛けになっているとは気付きませんでした(苦笑)
笑う警官 (角川文庫 赤 520-2)