書籍
1932年発表の推理小説。
早川文庫の電子書籍版(宇野利泰訳)を読みました。
最終章でのドルリー・レーンの告白により、
犯人の可能性が数人に絞られますが、
そこで、ようやく犯人に気づくことができました。
犯人が一度視野に入ってしまうと、
第一の毒殺未遂の不自然さ、
実験室の什器の配置や、なにやら細かい採寸、
死の部屋の窓から覗く犯人の表情、
などが次々に思い浮かび、
ほぼ間違いないだろうと確信しました。
この作品の特徴は、
探偵が犯人を特定した後、謎の行動に出るところと、
叙述的なテクニックとして、
犯人が誰であるかを読者に明かさないまま、
探偵の目を通した犯人の行動の描写がなされるところです。
殺人事件自体のミステリに、探偵の行動のミステリと、作者の作為が混じってしまい、
読んでいて何とも言えない居心地の悪さを感じてしまいました。
だがしかし・・・
名前は伏せられた犯人が、
毒を飲む被害者の様子を窓の外から覗き込むシーンで、
読者は仮想犯人を当てはめることになるのですが、
(私の場合は小説の存在を知っていた女性を当てはめました)
違和感を感じ、これはないなと思いつつも、
ゼロではない可能性に背筋がぞっとしたことを考えると、
効果的な手法であったと評価せざるを得ません。
その後、犯人を当てはめたときのしっくり感も含めて。
Yの悲劇