書籍
2007年発表。電子書籍版を読みました。
2014年の富士山マラソンだったか、長井マラソンだったか、
会場に向かう電車内で近くに座っていたランナー仕様の人が読んでいた本が気になり、
後日、うろ覚えのタイトルをネットで検索したところ、
村上春樹の著書だとわかったものの、
電子書籍版がなく、読むのをあきらめていたのですが、
この度、電子書籍版が発売されていたのに気付き、晴れて購読しました。
村上春樹は学生時代に初期の作品は殆ど読んだと思います。
「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」
だけは別格に面白く、強く心に残っているのですが、
他の作品は、今となっては内容を殆ど思い出せないし、
断片的に記憶に残るシーンも、さて、どの作品のものだったかというような状況です。
読みやすいし、読んでるときは、それなりに面白く読んでたはずなんですけどね。
エッセイも読みましたが、こちらはイマイチだったような。
ユーモアにキレがあるタイプじゃないのでね。
と、前置きが長くなりましたが、
本作は、村上春樹が走ることについて語ったエッセイです。
タイトルからして、回りくどいわけですが、
書き出しから春樹節全開で、なんだかまどろっこしい感じがして、
やれやれと思いつつ読み進めたわけですが、
ただ単に走ることについて語っているわけではなく、
走ることは人生のメタファーであり、
作家活動のメタファーでもあるわけで、
走ることについて語りつつ、
作家村上春樹について語っていることに気付くと、
もうこれは、村上春樹にだけしか語れない内容で。
それと同時に、ランナーとして共感せざるを得ない内容で。
特に執筆のペースコントロールなどは、プロだなとうなってしまいました。
村上春樹が自分を語る道具立てとして、
本作は、奇跡的にハマッているなと感じました。
とても貴重な作品だと思います。
追伸
春樹氏が雑誌の企画で、アテネ~マラトン間を走るという無茶をやった時、
その間、路上で犬3匹、猫11匹の死骸に遭遇したとのことです。
さすが、ギリシャですね(笑)
日本にいたら想像だにしないことなので、やってみるもんだな(ニヤニヤ)
「Pain is inevitable. Suffering is optional」覚えときます。
春樹作品も電子化されたら、いくつか読みたいなと思っています。
まどろっこしいタイトルは、レイモンド・カーヴァーの「愛について語るときに我々の語ること
(What We Talk About When We Talk About Love)」
にちなんで付けられているそうです。
走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫)