書籍
2003年発行。電子書籍を購読。
挑戦的なタイトルですが、中身を読めばなるほど納得です。
言語学習のあり方、語学に対する認識を改めさせられました。
ネイティブが言葉を紡ぐ際に拠り所とする感覚、
一つの言葉に一つある基本イメージこそが、言語表現の要であること、
一つの言葉に独立した違う意味が複数あると考えるのは誤りで、
すべては基本イメージからの派生形でしかないこと、
有機的に繋がった派生表現を覚えることで、
分断された複数の意味を覚えるよりも学習負荷が格段に減じること、
これらのことを、わかりやすい例を挙げて、
手を変え品を変え、懇切丁寧に説明しています。
例えば、接続詞の”as”は、日本語に訳すときには、
状況に応じて、”・・・とき(同時性)”、”・・・ので(因果関係)”
などと訳し分けますが、
ネイティブは特に、言葉を発するときに、分類して認識してはいないのです。
asはasでしかない。
助動詞の”must”の”・・・しなければならない”、”・・・にちがいない”
もしかり。
基本イメージに基づいて言葉が発せられます。
上記は英語の単語の意味の幅が日本語での複数の意味を包括する例ですが、
逆パターンとして、使役動詞”させる”に対する、”have”、”make”、”let”、”get to” が挙げられます。
強制的にやらせるmakeと、勝手にやらせるletとでは随分と意味が異なりますが、
日本語で”させる”というときに、意識的にその区別はしていないと思います。
自国語に立ち戻って考えれば至極当然なことで、なるほどなぁと。
注意しなくてはならないのは、タイトルに示されているとおり、
こわす対象となる学校英文法の知識が無いと、読んでも理解できないであろうことです。
すべてこわして、一から新体系をつくっているわけではなく、
換骨奪胎して、イメージという息吹を吹き込むような感じですかね。
本書で示された手法により再構築された英文法の新体系は
おそらく、後年に発表された同著者の「一億人の英文法」(未読)に、
集大成としてまとめられているようですので、
学校文法を習っていない人、ほとんど覚えていない人は、
本書ではなく、そちらを読んだ方がよろしいかと思います。
英文法をこわす―感覚による再構築 (NHKブックス)