書籍
2016年発行。電子書籍購読。
人気作家冲方丁が傷害の疑いで逮捕されたのは記憶に新しいですが、
本作は、氏が留置場拘留時に警察から受けた、
理不尽かつ狡猾かつ前近代的で滑稽ですらある仕打ちについておおやけにし、
現状の警察制度、司法制度に一石を投じるものです。
ちなみにタイトルの読みは、こち亀のモジリなので、「こちとめ」だと思います。
巻末対談の相手、周防正行の映画
「それでも僕はやってない」は痴漢冤罪を扱ってますが、
本作はそれのDV(家庭内暴力)ヴァージョンと行ったところです。
警察が、被害者とされる側の言い分を都合よく利用して、
国民の幸せを顧みることなく、
ひたすら自分たちの手柄を挙げるためだけに猛進する姿は
ただただ滑稽に見えます。
それを笑うしかないという作者の気持ちもわかりますが、
正直笑えないほど深刻な事態なので、
この状況を国民が知って、直していくことを本気で考えなくてはならないと
改めて感じました。
政治家であれば、選挙で選ばれる必要があり、外部から評価される必要があり、
自浄作用が曲がりなりとも働くわけですが、
警察官や検事、裁判官にはそれがないのだから、
腐敗してしかるべきであり、なるべく可視化、透明化して、
国民が監視できるようにしなければなりません。
彼らの、内部的なポイント稼ぎに費やす莫大なエネルギーを、
どのようにして国民の利益につなげていくか、
国民の不利益につなげないかが、
今、国民に問われているのだと思います。
作品としては、ホヤホヤの体験をとりあえず熱いうちに料理したという感じで、
今後じっくり時間をかけて、制度改革に踏み込むような続編を期待してしまいます。
参考記事:
冲方丁のこち留 こちら渋谷警察署留置場(集英社インターナショナル)