書籍
1948年「朝日評論」初出。青空文庫版。未完。
太宰治生家訪問をきっかけに読んだ「
人間失格」が読みやすくて、
普通に面白かったので、同時期の別作品を読むことに。
これはコメディ。
編集社に勤める主人公の男が、10人ほどいる愛人と別れるために、
知り合いの怪力担ぎ屋女に妻役として、別れ話に同行してもらい、
相手に綺麗さっぱりあきらめさせようと画策、実行するという話。
あまり気の進まない縁談や、告白を断るために、
知人に恋人役を演じてもらうという設定はありがちですが、
相手が10人の愛人、
本当の妻がいるのにもかかわらず、他人に妻を演じてもらう、
妻を演じる美人が、汚美人とでも称すべき、
普段はとにかく汚い格好で、下品で、大飯食らいで、
汚部屋で、色気が皆無という。
太宰治だからこそ考え得た設定だと思います。
主人公が汚美人のペースに巻き込まれつつ、
途中でプツリと終わりますが、
設定の面白さ、キャラクターの面白さは十分伝わり、
作品の魅力はほぼ出し切れていると思うので、
さほど、続きを読みたいとは思いませんでした。
作者もそこに未練はなかったわけですし。
グッド・バイ