なにげにチャンネルを繰っていたら、NHK総合のにんげんドキュメント「もう一つのW杯」という番組に遭遇。
W杯を目指すレフェリー、上川徹氏を追ったドキュメンタリー。普段スポットが当たらない職業に対して、みっちり内容の詰まった50分間。スタジオのどうでもいい芸能人が、どうでもいいコメントをすることも無い。この手の硬派ドキュメンタリーが民放では圧倒的に少ないのでNHK不要論を唱えづらい側面があるのも事実。
で、内容についてだが、普段気にもとめないサッカーのレフェリーという仕事の奥の深さを知らされるとともに、上川氏のプロ意識に感銘を受けた。
W杯をコントロールするレフェリーとしてピッチに立つには、13万分の1という代表選手以上の難関を突破する必要があるという。
レフェリーは選手以上の距離を走ることから体力トレーニングもトレーナーをつけて選手並み。常にボールの見える位置にいるためには走力だけでなく、常にゲームの次の流れを読み行動する必要があるという。自分がピッチに立った試合は必ずビデオにとって再チェックを怠らない。
特に奥が深いと思ったのは、ゲームをコントロールするために表情を使い分ける境地。本当に危険な行為に対しては、サッカーの尊厳を保つため厳しい表情をつくり厳然たる態度をとるが、流れの中で起きる仕方のないファールに対しては笑顔で諭すことで、ファールの応酬になることを未然に防いで行く。
でまた、この人の笑顔が、すごくいい笑顔なんですよ。目の横の皺に努力や経験が刻まれていて。選手もちょっと反抗できなくなるような・・・。表情って大切なんだなあと改めて思いましたよ。「40過ぎたら自分の顔に責任を持て」(リンカーン)という言葉がありますが、自分の顔を作ってきた人なんだなと・・・。
上川氏曰く、最初の15分くらいで、ゲームに対して良質の介入をして、その後は極力笛を吹かずにゲームをコントロールするのが理想とのこと。うーん、奥が深い。
前回の日韓W杯は審判の力量がまちまちで、残念な試合も多くあった。審判が試合をどの程度コントロールできているかという視点を加えてみると、更に楽しめそうである。