今回、短歌に初挑戦したわけですが、
みなさん!
作品に対してどのような感想を持っていただけたでしょうか。
コメント下さった方。本当にありがとうございました。
みなさんからのコメントも打ち止めのようですし、
この短歌の解説をしてくれる物好きな人も、まずいないと思いますので、
今回、自ら短歌の解説に、これまた初挑戦してみたいと思います。
「チンゲン菜
記念日!」だなんて・・・
缶チューハイ
たった四はいで
ぷにってコトかい?
まず最初の出だし「チンゲン菜記念日」についてです。
この言葉は作者が思いついたものではないようです。
この広いインターネット空間のどこかで、
2007/07/11(水) 23:17:39ごろに誰かの思いつきによって生まれ
後日それを目にした作者がインスピレーションを得て
この作品をつくりあげるモチベーションを得た。
と、考えられます。
この「チンゲン菜記念日」という言葉から、30代以上であれば
1987年に発行され、歌集・句集は売れないという定説を打ち破り
280万部の大ベストセラーとなった、あの、
俵万智の「サラダ記念日」を連想する人は多いはずです。
高校教師という立場でありながら、恋愛感情を詠った短歌も多かったため
当時高校生だった作者は、目を丸くしたと聞き及んでいます。
この「サラダ記念日」を契機に、大衆によって多くの「○○記念日」が創設され、
消費されるようになりました。
「サラダ記念日」以前に広く知られていたものとしては、
石野真子の「失恋記念日」くらいしかなかったと言われています。
歌集「サラダ記念日」におさめられた代表的な歌として
次の二首は欠かせないと考えられます。
・「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日
・「嫁さんになれよ」だなんてカンチューハイ二本で言ってしまっていいの
俵万智「万智の一人百首」より
ここで、作者は、今回の作品を俵万智作品へのオマージュ
とすることを決心したと考えられます。
そして、「記念日」と聞いて誰もが連想する「この味がいいね」をあえて避けて、
「嫁さんになれよ」をモチーフにして、
揺れる乙女心を詠い上げようと心に決めたと考えられます。
結果的に、上の句はチンゲン菜と俵万智作品からの引用で終始します。
さて、下の句ですが、
原作では上の句の「カンチューハイ」に続けて、「二本で言って」としていますが、
本作品では「たった四はいで」と続けています。
この言葉は次の一首からの借用と考えられます。
・太平の眠りを覚ます上喜撰、たった四杯で夜も眠れず
これは、1853年に浦賀にペリーの黒船が来航し、
強硬的に開国を迫られ大わらわする日本国内の様子を詠った一首で、
上喜撰(=上質のお茶)と蒸気船(ペリーの黒船)とが、
四杯と四隻とがかけられた、たいへん技巧的な作品です。
さて、本作では、「たった四はいで」を引用することにより、
幕末の歴史絵巻をもバックグラウンドとして取り込むとともに、
「嫁さんになれよ」=「開国しろよ」という強硬的な態度に対する
「夜も眠れず」な乙女心を言葉の裏側にしのばせることを試みていると考えられます。
そして最後の句ですが「言ってしまっていいの」「夜も眠れず」
などの感情はすでに言葉の裏に隠してあるわけですから、
ここはそれとは正反対の言葉と態度が求められます。
そうです。いわゆるツンデレです。
近年のツンデレキャラとしてまず思い浮かぶのが、涼宮ハルヒですが、
アニメ放映は終了し、若干、旬は過ぎた感があります。
そこで、同じ京都アニメーション作品で現在放映中の「らき☆すた」
に白羽の矢が立つわけです。
youtubeで250万以上のviewを誇るオープニング(
youtube)。
外国人にも衝撃を与えたとされています。(
youtube)
この爆発力と中毒性にあやかることを作者は意図したと考えられます。
出だしのフレーズが、「曖昧3cm」と数詞ではじまってますので、
「たった四はいで」に重ねることが可能となり、
「(そりゃ)ぷにってコトかい?(ちょっ!)」でこの短歌の締めとしては、
十二分に深みがあり、余韻を残す終わり方となっています。
なお、作者は、これら他作品の背景を知らない人でも、
言葉にリズム感を持たせることで、何となく楽しめて、
かつ、何らかの情景が浮かぶことを期待しているものと考えられます。
また、他作品からの引用の多用、なんとなく謎めかせて、
解釈を読み手にゆだねる手法(エヴァ的手法)により、
百人いれば百の解釈が出てくることをむしろ期待していると考えられます。
「どこを縦読み?」とか、
「チンゲン菜」やら「缶チューハイ」やら「ぷにっ」やら
よくわからないけど、下ネタか?とか、
思われた方もいらっしゃるかと思いますが、
それもまた、あなた自身を投影した一つの立派な解釈であり、
尊重されるべきものだと思います。
上記で延々と展開した解釈も無限にある解釈の一つに過ぎないのです。
「チンゲン菜
記念日!」だなんて・・・
缶チューハイ
たった四はいで
ぷにってコトかい?