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タグ:湯元健治/佐藤吉宗 ( 1 ) タグの人気記事
2012年 07月 05日
スウェーデン・パラドックス 【印象度:75】
2010年発行。

北欧と聞けば、高福祉社会というイメージがありますが、
その中身は全然知らないなぁとふと思い、読んでみることにしました。

そして、今までなんとなく持っていたイメージは、
かなり間違っていたことに気付かされました。

副題として、~高福祉、高競争力経済の真実~ とあるのですが、
社会主義的イメージがある高福祉と、
資本主義における高競争力とは共存し得ない、
と考えてしまいがちだけど実は共存し得るという意味での
「スウェーデン・パラドックス」というタイトルのようです。


スウェーデンにおける社会保障や労働市場の制度設計について、
かなり詳細に整理・分析を行っています。
制度設計の思想とその制度の適用についての知見を得る上で貴重な資料ですが、
制度下における生身の人間の姿があまり見えてこないというか、
ホントのところ国民はどう思ってんのよと感じてしまうと言うか、
でも、それを本書に求めるのも違うかなと思うので、
別途、違う視点での知見で補完する必要があると感じました。


以下、私なりの気づきポイント備忘録です。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
(1)就労インセンティブを損ねない福祉制度設計

スウェーデンでは「働かざる者食うべからず」が徹底していて、
年金や失業手当などは原則として各個人の給料に比例して支払われます。
(無論、支給額の上限下限は設定されていますが)
大の大人が扶養家族として養われるという概念がなく、
専業主婦になることが経済的にも社会通念上も難しい社会になっています。

働かない人間に対して甘い日本とは対照的です。
日本の場合、働かない者と働けない者とを区別する
制度設計になっていないことに気付かされます。

例えば日本で主婦などがパートタイムで働いた場合でも、
130万円を超えて働くと扶養家族でなくなり、手取り額が少なくなるとか、
明らかな制度設計ミスとしか言いようがないのですが、
誰も直そうとせず放置されています。
扶養家族となり、なるべく働かないという選択肢のお得感が高く、
それ以上働かないための言い訳として、
上手く利用されている側面もあるのでしょう。

日本のこのような制度は扶養家族がいない独身者や
子どものいない共働き夫婦など、
あまり恵まれていないかも知れない層から、
「扶養家族」を養える比較的裕福かも知れない層に、
富を移転させる制度という見方もできますからね。

スウェーデンではこのような労働に対する
逆インセンティブが発生しないように、
こまめに制度を修正して対応しているようです。


(2)教育の在り方、労働市場との関係

スウェーデンでは基本的に大学まで教育が無料で提供されます。
親が金持ちであろうが、貧乏であろうが等しく教育を受けることができ、
階級の固定化、貧乏の遺伝を制度として阻止しています。
階級社会のヨーロッパの中にあって画期的なコンセプトと言えます。

教育が無料であることをあえて
教育の現物支給というような言い方をしたりしますが、
手当などの現金支給にすると、審査などに事務経費がかかるだけでなく、
必ず不正が発生するわけで、
現物支給であることに大きな意味があったりします。

大学までの教育も実学指向で、
労働市場において即戦力となりうる人材が育成されているようです。

また、失業者が業務スキルを得るための教育制度が充実しています。
失業者はこういった制度を活用するなどして、
就職に対して前向きな活動を行っていることを示さないと、
失業手当をもらうことができないようです。
ここでも、働く意志のないものは食うべからずが徹底しています。


(3)連帯賃金政策、同一労働同一賃金

個人的には最も興味深い制度です。
と同時に制度が上手く動いているかについて懐疑的でもあります。 

スウェーデンでは、会社ごとにではなく、業種・職能別に40ほどの
労働組合が組織されており、
産業別に組織された経営者団体との交渉により、
職務内容や経験、教育水準、職階ごとの細かい賃金が定められます。
これにより、同じ職務内容であれば、
他の会社で働いても同じ賃金がもらえるという
「同一労働同一賃金」が実現されます。

利益を労働者に還元する必要がないため、
利益率の高い会社や新しい産業は、
大きな利益が得られ、利益が設備投資や雇用の拡大にまわると同時に、
利益率の低い会社や古い産業は淘汰され、
そこに投入されていた労働力等のリソースの移転が
スムーズなるという理屈です。

労働者の労働内容は最初に決まっていて、
労働者は決められたことをすれば良く、
プラスアルファを求められることはないということなのでしょう。
ヨーロッパ的な労働観がそのまま残っているようです。

契約や仕様書に書かれていないことこそを求められる
日本的な労働観とは対照的です。
労働者個々のカイゼンや工夫、新しいアイディア、ひらめきの集積、
組織的または組織を超えたネットワークによる集合知などが、
付加価値の源泉であると考える日本的な考え方(私の勝手な解釈ですが)
とは根底から大きく異なるように感じてしまうのです。

スウェーデンモデルに限らず、諸外国の付加価値創出のしくみについては、
不勉強で情報不足なので、今後も情報を収集して
理解するようにしていきたいと感じました。



スウェーデン・パラドックス
by camuson | 2012-07-05 08:38 | 書籍 | Trackback | Comments(0)