書籍
1996年発表。
講談社ノベルス版を読みました。
シリーズ前作「狂骨の夢」を読んだのが2006年3月なので、
実に6年と9ヶ月ぶりに京極作品を読むことになります。
前作読了後に既に購入していましたが、
本がやたら分厚く、持ち運びができないので、手が付けられませんでした(苦笑)
その間、震災があって水損し、頁がガビガビに。
(東京に住んでいながら、蛇口レバーにワインの瓶が落ちて水浸しになりました)
完全に水に浸かったわけではないので読めないことはないです。
鼠に食われていなかっただけ良しとしましょう。
というわけで、正月休みでもないと読めないと思い至り、
実家に持ち込み何とか読了しました。
箱根の山奥にあるお寺で坊主が連続で殺されるというお話しです。
これまでの作品と比べて、華がありませんが、
これは意識的に抑えているのでしょう。
冬の雪山が舞台なので、視覚的にもモノトーンです。
蘊蓄の深さでは、これまでのシリーズ四作の中でも随一です。
禅にフォーカスした分、妖怪である鉄鼠についてはかなりあっさりめです。
人物描写も深く、今川の生い立ちの話はかなりの頁が割かれています。
特に伝統工芸が職人技か芸術かで葛藤するところが興味深かったですね。
ちょうどNHKでやっていた「樂家十五代・樂吉左衛門」を見たところで、
なんとなくその内容と重なりました。
樂は芸術に踏み込んで評価されたわけですが。
本作は素材が地味な分、職人芸的な味わいを楽しめる作品だと思います。
エンターテインメントに仕立て上げる手腕は相変わらずで、酔いしれました。
鉄鼠の檻 (講談社ノベルス)