書籍
2010年発表。
短編5編からなるオムニバス小説です。
死者と生者の密会を媒介する使者である「ツナグ」が、
都市伝説としてだけでなく、実存するという世界設定です。
ツナグの力により、生者は死者一人だけに一夜だけ逢うことができ、
そこに生まれるドラマが描かれていきます。
設定および全体の構成がしっかりと練り組み立てられていて、
伏線が上手く配置されていると思いました。
平易で読みやすくあまり飾らない選ばれた表現により、
超常的な設定と、ありふれた身近な世界が上手く融合しています。
各編粒ぞろいなのですが、
3編目の「親友の心得」は起承転結の「転」にあたり、
他の「ちょっといい話」と毛色が異なるようです。
登場人物が生き生きと描かれている分、
死の痛さが胸を突くのですが、
その反面、
この話だけ、真相もよくわからなければ、
死んだ娘の意図もよくわからないんですよね。
その日に限って事故が起きる可能性にかなり無理があるため、
自殺じゃねーのと勘ぐってしまったり。
気になります。
ツナグ (新潮文庫)