書籍
2003年発表。電子書籍版を読みました。
現在のカンボジアが舞台。
(1)妻子を日本に残してカンボジアに消えた元同僚を探し出す目的でカンボジア入りした日本人自衛官。
(2)クメール・ルージュの生き残りで構成された村の青年村長。
(3)カンボジアの識字率を上げようと現地で精力的な活動を続ける日本人活動家。
以上の3人の人物の視点を切り替えながら話が進められ、
共通のある一人の男を介して、3つの物語がつながり、転がっていくという流れです。
少女売春・人身売買ビジネス(華人やベトナム人が牛耳る)、
地雷撤去への補助に関わる利権(政府が牛耳り、勝手に地雷を撤去すると罰せられる)、
などカンボジアのかかえる闇の世界が描かれていて、
生々しくも興味深いです。
治安が悪いとかのレベルじゃないんですよね。警察が腐敗していて。
犯罪を犯しても殺人しても、きちんとした捜査がなされないので、
やったもの勝ちの世界で、
やられたらやり返すし、やられないうちにやらないとやられますし、
一般人が皆ヤクザの世界に生きてるような感じですかね。
とにかく人の命が軽くて、ちょっとカッとすると、
殺して解決してしまうんですよね。
おそらく、カンボジアに限らず、
発展途上国に共通なんだろうなと思うわけですが。
一方で、警察は、外国人に対して、高額な保釈金を目当てに、
やってもいない罪をでっち上げて、拘留するのが日常的になっているようです。
警察に限らず、とにかく、権力が与えられれば、
自己利益のためにしゃぶり尽くすことがデフォルトになっているんですよね。
長編作品なので、途中、少しだれますが、
終盤はスピード感のある展開で、没入できました。
ただ、緻密な計画を立てる人間が、何故ああいった死に方をしたのか、
腑に落ちない感じです。
夢は荒れ地を (集英社文庫)